ドラマ「やまとなでしこ」...私にはあまり刺さらなかった。

ネタバレご注意ください。


良く知られている事ではあるが、ドラマの登場俳優に関しては事件がある。また、それに絡めてなかなか再放送が出来ないことに関して、評判が良いのに、という意見があるようだ。

私は長い間、このドラマを観た事は無かったので、それってどういう感じなのかな、と観てみる事にした。


既に私の感想は、タイトルでバレているが、観た雑感から書いていく。


...とはいうものの、周囲の登場人物は結構興味深かった。

周囲の登場人物の生態と結果は、興味深い。

奥山なみ(演:須藤理彩)


例えば、ドラマが進んでいくにつれ、次第に明らかになっていくのだが、奥山なみは恋愛に関して、相手に対して執着と言うか、相手に対して感情が重く出てしまい、壊れることを恐れて二股かけたり、この人は食事だけだから、と行動を制約していたりする。


単に相手をそういう目的で見ている*1と視聴者は感じると思うが、その実、その人とは食事をしているだけだよ、と自分に言い聞かせている、と考える事も出来る訳で。
実際、花房と会えない時に、自分が誰かを求める気持ちを会える人に向けるような感じで、粕谷に電話をかける、みたいな行動が出ていて、最初浮気性と思えるような錯覚を感じさせて、実はずっと誰かのそばに居たいのでは、という感じに見えてくる。
ここら辺は、深い描写まではされないので、あくまで「そう感じた」に過ぎないのではあるが。

粕屋紳一郎(演:筧利夫)


筧利夫さんの謎のキャラ作り*2の関係で、人物の内面が若干謎なのだが、多分、基本的に一途でちょっと鈍感な人という設定なのだと思う。
最初、その関係で二股にも気づかないが、気づいた後も、基本、奥山なみに合わせた、というか、自分の一途な気持ちに合わせた、かなり打たれ強いというか、諦めが悪い人物なのだと思う。
これ、何気に奥山なみが嘆いている、重い恋愛行動としては似ている部分でもあるんですよね。しつこく電話したりする所とか。ラストの方で、奥山なみとうまくいき始めているのは、そういう意味では必然だったようにも見える。

塩田若葉(演:矢田亜希子)


かなり最初の頃から、中原欧介に関心を寄せていますよね。
第二話で、もう一回同じメンバーで合コンやって、と言うところで、明らかに中原欧介が魚屋をやっている、とか聞き出そうとしていますし。さらには、実際に店にも来て、店を手伝いだす、という流れになる。
かつ、後半部分では、中原欧介の行動の変化や、心の流れの変化に気づくという、思いを寄せる人の視点から分かる部分があって、登場人物の中ではかなり辛い経験をする位置づけになってしまっていたのが、物凄く辛く感じられた。
なお、男女が逆だが、私も似た感じ立場になった事があって、片思いの人は結局のところ何も報われない、というリアルな体験*3を思い出して、そこの部分も辛かった。


ところで、NY に旅立つ桜子に、私は桜子さんのように合コンの女王になって、というシーンがあるが、あれ結果的に桜子に負けたという状態になったからの台詞なのかねえ。
そこら辺の発想が、そもそも私と違うが、そこは負けとかそういう事ではなく、私なりの幸せを掴んでみせる、というような台詞の方がキャラにあっているのではないのか。
元々、好きな相手に一途に向かっていく、という感じのキャラで、今回一緒になれなかったのも、本人に数学に関しての背景があることに気づけず、本人の本音に触れていなかったからの流れなので、根本的にそこを勘違いしていないか、気になる。

佐久間真理子(演:森口瑶子)


第一話から何気に、本人と中原欧介との確執というか、互いの感情の存在が示唆されている人。
最初の方から、明らかに中原欧介に対して、思いやりと言うか、優しさみたいなものが垣間見えるし、中原欧介が思いを寄せた人は結婚してしまっている、というセリフ(第一話)の中で、雪子さんが結婚したことが示唆されるのと同時に、もう一人、真理子さんが結婚したことが示唆される...つまりは過去に思いを寄せていた人という事になる。
さらにはラスト近くで、真理子さんが「私はそういう風にならなかったけど*4、貴方ならなれる*5」みたいな事をいう訳で、某プレゼントの話と合わせると、実は佐久間為久との結婚は、実はかなり危うかった事が感じられる*6
桜子との繋がりを深めようと、中原欧介にハッパをかけてみたり、そういう自分の行動に何かを感じていたのかどうか、そこら辺は良く分からない。身近にいて、見守っていようと思ったのかも。

東十条司(演:東幹久)


二話あたりの流れから、ライバルキャラかな、と一瞬思いましたが、そんな描写はなく、最後まで桜子の行動に振り回されただけの人。かつ、それでも、あそこまで抑制的な行動をしている所は何気にすごいかも。
あと、お金持ちの属性描写がステレオタイプ的なので、この人の台詞もそんな感じになっていて、行動をする登場人物と言うより、背景のモブキャラ的な感じになっていたのが、なかなか可哀そう。
これは両親もそうで、ここは人物を描きたいのではなく、単なるドラマの背景画みたいだよなあ、と思った。まあ、合コンの参加者なんかもそうですが*7
最後のサプライズパーティの全員の航空券代も出していたそうだし、元婚約者*8でありながら、相手の結婚を祝福しているのが、なかなか出来ないことで...。まあ、コメディドラマと考えればドラマ描写に過ぎないわけだが...。

神野桜子(演:松嶋菜々子)


総ての元凶。
というか、そもそもドラマの成立の原因はこの人だし、実際、どのくらいの被害を出したのか想像もできない。


ただし、そもそも、最初から「恋はしたことない」と言っているし、本物の恋を初めて感じた、というのが、このドラマの最終的な帰結点だったのかも。
お金持ちと結婚する、という自分の行動力の源泉が、実は自分が望んでいたことでは無かった、と気づくのが最終的な結論なら、この人がついていた最後の嘘は、自分の心に対するものではなかったのかな*9、と思います。


実は、この事は第一話で既に示唆されていて、雪子さんから言われた「10年後の姿が見えない」の真逆の台詞を、桜子が最後に言うんですよね。最終話で同じ意味の告白をするシーンもあるのですが、実は一番最初の回で、それを言われている。
おまけに、最初の方のデートで、寄り道しませんか、と言って公園に忍び込むシーン、明らかに他の場面とテンションも雰囲気も違って、心から楽しんでいる感じがある。ここにある感情が本物なら、ここで本音をさらしている感じなのですね。
それ以外のシーンでは、「お金持ち~」というセリフや、行動ばっかりですが、こっちの方が嘘だと分かれば、必然的に表に出てくる本物の感情と言うものはある訳で。


東十条さんへの感情が無かった、というのが最後の嘘、と言っているわけで、結局のところ、そういう嘘に、ほぼ全員が振り回されてしまっているわけですね。

だが、ドラマは...

...ただし、だ。
タイトルに書いたように、それが私には全然刺さらないのだ。

勿論、そういう人もいるのだろうし、実際に台詞にあるように「前から私の中に貴方は居た」という事実があったのだと思う。
それで結婚式から病院に駆けつけてしまうわけだから。

ただ、それがなんかこちらに伝わって来ないんだよね。

何かを感じたのは事実なんでしょう。でも、それがどこにあって、何が理由なのかがうまく表現されていないように感じる。
勿論、個人的な思いや感情が存在するのが、人の恋であり、他人への感情なので、他人に理解されない、そういう感情はあっていいんですよ。

ただ、ドラマなので、そこら辺の感情の熟成と言うか、発生と言うか、そういう処の表現を、もうちょっと丁寧に描いてくれないと、何かト書きでそこに書いてあるから、設定だから、そういう物語になった、みたいな感じ方しかできない。

そこを全然実感できなかったので、私はこのドラマは刺さらなかった。
確かに、名台詞っぽい言い回しはあります。確かにあるのですが、それが実感を持って感じる事が出来なかった。

それが周囲の登場人物の興味深い生態と、その行動には関心を持って観る事は出来たのに、ドラマ全体がいまいちに感じてしまった点です。

*1:体よく食事相手に使っていると最初は思う。実際、そういう部分もあるかもしれないが、防衛行動としての方針と考える事も出来る。

*2:合コンで何故か制服を着てこない事に愚痴をいう処とか。他にもある。ああいう部分は私は謎なキャラ作りだった。

*3:ドラマだと、それを誰かが見ていて、という感じになる事もあるが、現実はそんな所は誰も見ていないのです。

*4:私もあの人の元に走ればよかった。

*5:やさしい殻から引きずり出す。

*6:ドラマとしては成立しないので、物語上そうはならなかったが、中原欧介と結婚した未来もあり得た人なのでは。

*7:航空会社の同僚も似た感じですよね。

*8:というか、本人の談では、そもそも何の感情も感じていなかったわけだが。

*9:決して失恋した、と認めないし、そもそも恋なんかはするものではない、というのが最初からの描写。ただ、変わった、という内容の描写が薄くて、ラストシーンすら本音で告白しているように見えないので、シナリオをもうちょっと何とかしたら、と思っているのが私の感想です。