精神異常者への誤解は、主張者の「精神異常に対する無知の露呈」では?

犯罪者は精神異常者が起こす、のではない。(某創作が罪作りな部分) - luckdragon2009’s blog(日々のスケッチブック) の続きかもしれない記事です。
よく精神異常者が...という論調がありますが、こういう際の対象者を考察した時に、もしかして一般の人はそもそも「精神異常者」という言葉を、本来の定義とは意味が違う対象集団に対して使っているのではないか、という事に思い当りました。そのため、ここに覚え書きとして記載しておきます。考察が深まったら、もう少し深い記事を追加するかもしれない。

よく精神異常者が、という言葉を使いますが、一般の人は精神異常を正しく診断する技術を持ちません。臨床の精神科医ではないので当たり前ですが、ではどういう想定像を持っているかと考えて、「精神が異常だと思える行動を取っている人」を指して言っているのでは? という事に思い至りました。
それは精神異常者ではなく、他人に対して犯罪行為を日常的に行っている人から行為が異常に見える像を抜き出して、そう言っている可能性もある訳で、その想定では本人に論理破綻は無い訳です*1

すると、『あなたの診断基準が間違っていますよ。犯罪行為者を、あれは「精神異常者だ」と診断してしまう事が、臨床精神医学的に間違いですよ。』と伝えるのが、相手に適切な意味での内容が届く言葉、なのかもしれない。

あなたの主張する「精神異常者」は、本当に臨床精神医学的な「精神異常者」ですか? もしかして、自分の都合の良い選択集団を「精神異常者」と言っているだけではないのですか?


...そう考えると、主張の間違いが非常に明確になってくるように思う。心神喪失者についても、実は実態を知らないのではないのか?

*1:犯罪行為者を指して、「精神異常者は、犯罪者として要注意」と考えている訳ですから。(ここで言われている「精神異常者」は、実は「精神異常と診断されている人」ではなく、主張者が目撃している犯罪行為者自身。)

テスト的にインポートを試したが...

思う処あって、旧ブログのインポートをテストブログを作って非公開で試してみました。
「そんなにそっくりになるとは!」と思うほど旧ブログの内容をそっくり映したブログが作成できましたが、「新しくブログを作ったのに、まるで自分が何も変わっていないみたい!*1な感想を持ちました。
なので、旧ブログ自身が消える事は今のところはなさそう*2なので、旧ブログはそのまま残し、こちらでは新しい記事のみを載せる事にしました。

こちらからのリンクは貼りますので、旧ブログへはそれで移動してみてください。
なお、旧ブログからの移転記事も普通に作成できそうなので、一般的かつ永続的にフォローしていくような内容は、こちらに移すかもしれません。


という訳で、今後はこちらで記事公開をしてく予定です。

*1:実際には色々変わっているのに。

*2:ひとまず、はてなの決定が変わらない限り

お引越し

こちらでの初めての記事

長く Diary で書いて来ましたが、こちらに移ってきました。実は前からサービスは設定してあったのですが、ちゃんと書き始めたのは今日からです。

犯罪は精神異常者が起こす、のではない。(某創作が罪作りな部分)

多方面から創作が疑われるに至っている、本当にあったとされている誘拐未遂事件*1の件だが。
精神科医が懸念を表明していて、あれの一番いやな処は実際に類似の事件があるかどうかではなく*2、そういう事に気を付けようと訴えている表現に、精神異常者への偏見をかぶせに行っている処でしょう。
人の偏見や、ステレオタイプ心理に漬け込む構造になっている。
実は現実に医療観察法も似た構造を持っており、それを話題で持ち出す場合には、そもそもがこの話題の狙いに見事にはまってしまっているので、その点に注意して欲しい。
実際には犯罪行為を異常な状態とみなす心理が、それを形成していると思っているのですが、犯罪者は基本的に精神異常者ではありません
悪意ある普通の人が起こすのが大半の犯罪です*3
精神異常と判断される人は、人より判断が偏っているがゆえに、犯罪を最後まで完遂できないです。犯罪を完成させてしまえる人は、嫌な事ですが、そこまでの能力はある人、狡猾で人の盲点を知っており、人の盲点につけ入ることが出来るほどに、精神的には普通の人、なのです。
一見して異常に見えれば、周囲に警戒心を抱かせ、最終的には犯罪行為を完遂できないはず*4なのですが、相手の異常性に着目しているとき、その構造はきれいに忘れ去られてしまう。
犯罪は異常に見える人が起こすはずだという思い込みは、防犯の上でも怖い構造を生みやすい*5ので、心しておいてほしい部分です。

*1:twitter で告知された、子供を失った影響で、自分の子供と勘違いして他人の子供を誘拐し、警察に通報されたという事件。本当に起きたのなら、警察記録に載る筈なのだが。

*2:実際に人の心理の盲点を狙った犯罪はあるでしょう。その部分は事実。

*3:犯罪を犯罪として認識できていない心理がある部分はありますが、それは精神異常というより、行動則の異常のような感じ。あくまで、精神状態は正常です。いわゆる精神疾患ではありません。

*4:ある分野の精神異常の場合には、さらに捜査上の取り調べで、犯罪行為を実際にはしていないのに、あたかも自分がしたかのような心理に誘導されやすい人もいます。

*5:目につきやすい異常者を警戒し、悪意を隠し、密かに犯罪を犯す真犯人を見逃してしまう。冤罪を生みやすい心理。

刑事裁判(東京地裁)の傍聴席にて(1)

ちょっと続くかも知れないので、題にナンバリングが入っています。
久しぶりに東京地裁*1に裁判の傍聴に行ってきました。
何気に裁判予定帳が電子化されて、検索がし易くなってましたが、各部屋の前に出ているのは印刷した紙のままで、ちょっとだけ便利に?なった印象が、少し経った時間を感じさせてくれました。
確認したかった民事訴訟が意見書待ちの状況らしく、あまり時間がかからなかったので、実は刑事裁判を初めて傍聴したのですが、なかなか考えさせる状況でした*2
なお、精神的に余裕が無いと、そういう場にいると、色々心に刺さるものがある、と良く言われているので、入る際に覚悟は決めていたのですが、一般に言われる犯罪の実態とはちょっと違う裁判の内容が待っていて*3、今回の話は、ちょっと犯罪の話とは別傾向の話になるように思います。ただし、違う方向性でも、色々と考える内容はありました。


書くのに、色々考える事が多いので、ひとまず今日はここら辺で。また次回に。

*1:霞が関ですね。法務省赤レンガ棟の隣。

*2:時間の余裕があったので、実際には複数事案を傍聴しています。各事件をあまり特定させないように、焦点はぼかして記載する予定です。

*3:傍聴自身は一件ではないのですが、いずれも審理で、新件ではなく、ある程度進んだ裁判で、次回が判決という状況だったのですが、検察側も弁護側も、被疑者側も、それぞれ最終的な証言があったので、概要はかなり知ることが出来ました。なお、基本的には裁判記録で閲覧できる内容しか書く予定ではないのですが、それでも、色々考える事は出来ると思います。

議員の発言、表決の法的免責に関連する判例。

「平成6(オ)1287損害賠償-平成9年9月9日最高裁判所第三小法廷判決」

元々は休載の予定であったが、奇妙な民事損害賠償のニュースが飛び込んできた。
基本的に国会議員は憲法51条により、発言について院外で法的責任を問われない。
第51条 議員の発言、表決の無責任 / 日本国憲法 逐条解説

第4章 国会
第51条 【議員の発言、表決の無責任】
 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

http://law.main.jp/kenpou/k0051.html

これは知られていると思われるのだが、昨今、法知識の必要性が問われる状況も増えているし、政治的な視点から法を曲げて解釈する向きも目につくので、念のため、関連する法条文と判例をまとめておくことにした。
以下、判決概要を掲示
平成6(オ)1287損害賠償-平成9年9月9日最高裁判所第三小法廷判決

国会議員が国会の質疑等の中でした発言と国家賠償責任
裁判要旨
 国会議員が国会の質疑、演説、討論等の中でした個別の国民の名誉又は信用を低下させる発言につき、国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする。
参照法条
国家賠償法1条1項,民法710条,憲法51条,衆議院規則45条1項

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52530


以降、判決文を掲示する*1
判決文

主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告人の上告理由第一点について
一 本件は、被上告人Bが国会議員として行った本件発言により、上告人の夫であるDの名誉が毀損され、同人が自殺に追い込まれたとして、上告人が、被上告人Bに対しては民法七〇九条、七一〇条に基づき、被上告人国に対しては国家賠償法一条に基づき、それぞれ損害賠償を求めている事件である。原審が確定した事実関係は、おおむね次のとおりである。
1 昭和六〇年一一月二一日に開かれた第一〇三回国会衆議院社会労働委員会において、当時衆議院議員であり同委員会の委員であった被上告人Bは、同日の議題であった医療法の一部を改正する法律案の審議に際し、地域医療計画における国の責任、医療圏・医療施設に関する都道府県の裁量権、地域医療計画策定についての医療審議会への諮問等に関する同法律案の問題点を指摘するとともに、札幌市のE病院の問題を取り上げて質疑し、その質疑の中で本件発言をしたが、右発言は、患者の人権を擁護する見地から問題のある病院に対する所管行政庁の十分な監督を求める趣旨のものであった。
2 本件発言の概要は、E病院の院長Dは五名の女性患者に対して破廉恥な行為をした、同院長は薬物を常用するなど通常の精神状態ではないのではないか、現行の行政の中でこのような医師はチェックできないのではないかなどというものであった。
二 所論は、特定の者を誹謗するにすぎない本件発言は、憲法五一条が規定する「演説、討論又は表決」に該当しないのに、原審が上告人の被上告人Bに対する請求を排斥したのは不当であるというものである。
しかしながら、前記の事実関係の下においては、本件発言は、国会議員である被上告人Bによって、国会議員としての職務を行うにつきされたものであることが明らかである。そうすると、仮に本件発言が被上告人Bの故意又は過失による違法な行為であるとしても、被上告人国が賠償責任を負うことがあるのは格別、公務員である被上告人B個人は、上告人に対してその責任を負わないと解すべきである(
最高裁昭和二八年(オ)第六二五号同三〇年四月一九日第三小法廷判決・民集九巻五号五三四頁、最高裁昭和四九年(オ)第四一九号同五三年一〇月二〇日第二小法廷判決・民集三二巻七号一三六七頁参照)。したがって、本件発言が憲法五一条に規定する「演説、討論又は表決」に該当するかどうかを論ずるまでもなく、上告人の被上告人Bに対する本訴請求は理由がない。これと同旨の理由により右請求を排斥すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、原判決の結論に影響しない説示部分をとらえて原判決を論難するものであって、採用することができない。
同第二点について
国家賠償法一条一項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責めに任ずることを規定するものである。
そして、国会でした国会議員の発言が同項の適用上違法となるかどうかは、その発言が国会議員として個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背してされたかどうかの問題である。
二 ところで、国会は、国権の最高機関であり、憲法改正の発議・提案、立法、条約締結の承認、内閣総理大臣の指名、弾劾裁判所の設置、財政の監督など、国政の根幹にかかわる広範な権能を有しているのであるが、憲法の採用する議会制民主主義の下においては、国会は、国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を、その構成員である国会議員の自由な討論を通して調整し、究極的には多数決原理によって統一的な国家意思を形成すべき役割を担うものであり、国会がこれらの権能を有効、適切に行使するために、国会議員は、多様な国民の意向をくみつつ、国民全体の福祉の実現を目指して行動することが要請されているのである。
そして、国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではなく、国会議員の立法行為そのものは、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法行為を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法上の違法の評価は受けないというべきであるが(最高裁昭和五三年(オ)第一二四〇号同六〇年一一月二一日第一小法廷判決・民集三九巻七号一五一二頁)、この理は、独り立法行為のみならず、条約締結の承認、財政の監督に関する議決など、多数決原理により統一的な国家意思を形成する行為一般に妥当するものである。
これに対して、国会議員が、立法、条約締結の承認、財政の監督等の審議や国政に関する調査の過程で行う質疑、演説、討論等(以下「質疑等」という。)は、多数決原理により国家意思を形成する行為そのものではなく、国家意思の形成に向けられた行為である。もとより、国家意思の形成の過程には国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益が反映されるべきであるから、右のような質疑等においても、現実社会に生起する広範な問題が取り上げられることになり、中には具体的事例に関する、あるいは、具体的事例を交えた質疑等であるがゆえに、質疑等の内容が個別の国民の権利等に直接かかわることも起こり得る。したがって、質疑等の場面においては、国会議員が個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うこともあり得ないではない。
しかしながら、質疑等は、多数決原理による統一的な国家意思の形成に密接に関連し、これに影響を及ぼすべきものであり、国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を反映させるべく、あらゆる面から質疑等を尽くすことも国会議員の職務ないし使命に属するものであるから、質疑等においてどのような問題を取り上げ、どのような形でこれを行うかは、国会議員の政治的判断を含む広範な裁量にゆだねられている事柄とみるべきであって、たとえ質疑等によって結果的に個別の国民の権利等が侵害されることになったとしても、直ちに当該国会議員がその職務上の法的義務に違背したとはいえないと解すべきである。憲法五一条は、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」と規定し、国会議員の発言、表決につきその法的責任を免除しているが、このことも、一面では国会議員の職務行為についての広い裁量の必要性を裏付けているということができる。もっとも、国会議員に右のような広範な裁量が認められるのは、その職権の行使を十全ならしめるという要請に基づくものであるから、職務とは無関係に個別の国民の権利を侵害することを目的とするような行為が許されないことはもちろんであり、また、あえて虚偽の事実を摘示して個別の国民の名誉を毀損するような行為は、国会議員の裁量に属する正当な職務行為とはいえないというべきである。
以上によれば、国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではなく、右責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である。
三 これを本件についてみるに、前示の事実関係によれば、本件発言が法律案の審議という国会議員の職務に関係するものであったことは明らかであり、また、被上告人Bが本件発言をするについて同被上告人に違法又は不当な目的があったとは認められず、本件発言の内容が虚偽であるとも認められないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができる。したがって、被上告人国の国家賠償法上の責任を否定した原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 尾 崎 行 信
裁判官 園 部 逸 夫
裁判官 大 野 正 男
裁判官 千 種 秀 夫
裁判官 山 口 繁

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/530/052530_hanrei.pdf

*1:PDFファイル内の文章を整形した。