街並みも、道行く人も、変わらないように見えて、実は。

人の体は一見常に同じように見えても、細胞が絶えず交換されて、そう見えるだけ、というのはどのくらいの人が意識しているのだろうか。小鳥などの寿命は短く、良く似た鳥が同じ餌場にやって来ていても、それは同じ鳥ではない。野良猫などでは、もうちょっと時間の単位は長いが、やはり良く見た猫がいつの間に消え、新参の猫にとって代わられている、という事は起きていて、同じ情景が常にある訳ではない。
アガサ・クリスティの「バートラム・ホテルにて」でも、ミス・マープルが街の移り変わりや、その街区に住んでいた人の移り変わりを嘆く描写がある*1。田舎はともかく首都圏あたりだと、街並みの変化は激しい。ごく普通の一軒家でも、人が亡くなったりすれば、長くそこにあった家でも、短い間に取り壊され、あまり長くない時間の後に、まったく違う家族が住む家が出現する。
通勤で同じ時間帯に列車を使えば、一見同じような人に会えるような気がする。が、季節によって人は変化するし、やはりずっと同じ人たちではない。
よくよく考えてみると、人の寿命からして、そこを行き交う人はずっと同じではない。でも、一見、似た集団がそこに居るように見えるのは、古い人が消えても、新しい人が現れているから。


でも、意外に人はそれを考えない。自分自身に寿命があることを、存在が永遠ではない事を考えたくない、という心理もあるのだろう。が、それ以上に、毎日継続されている事が、次第に変わっていく事について、考える習慣がなかなか無い事も、それに起因していると思う。
一見、ずっと似たような情景が続くように見えても、そこに居る人は入れ替わっている。同じ人が永遠にそこに居るわけではない。

その意味を時々は考えるようにしたい。

*1:そもそも、バートラム・ホテル自身が、そういう失われた情景を保っている演出がなされた設定であり、ある意味、この作品は、そういった情景が幻想である事を示しているとも言える。

精神異常者への誤解は、主張者の「精神異常に対する無知の露呈」では?

犯罪者は精神異常者が起こす、のではない。(某創作が罪作りな部分) - luckdragon2009’s blog(日々のスケッチブック) の続きかもしれない記事です。
よく精神異常者が...という論調がありますが、こういう際の対象者を考察した時に、もしかして一般の人はそもそも「精神異常者」という言葉を、本来の定義とは意味が違う対象集団に対して使っているのではないか、という事に思い当りました。そのため、ここに覚え書きとして記載しておきます。考察が深まったら、もう少し深い記事を追加するかもしれない。

よく精神異常者が、という言葉を使いますが、一般の人は精神異常を正しく診断する技術を持ちません。臨床の精神科医ではないので当たり前ですが、ではどういう想定像を持っているかと考えて、「精神が異常だと思える行動を取っている人」を指して言っているのでは? という事に思い至りました。
それは精神異常者ではなく、他人に対して犯罪行為を日常的に行っている人から行為が異常に見える像を抜き出して、そう言っている可能性もある訳で、その想定では本人に論理破綻は無い訳です*1

すると、『あなたの診断基準が間違っていますよ。犯罪行為者を、あれは「精神異常者だ」と診断してしまう事が、臨床精神医学的に間違いですよ。』と伝えるのが、相手に適切な意味での内容が届く言葉、なのかもしれない。

あなたの主張する「精神異常者」は、本当に臨床精神医学的な「精神異常者」ですか? もしかして、自分の都合の良い選択集団を「精神異常者」と言っているだけではないのですか?


...そう考えると、主張の間違いが非常に明確になってくるように思う。心神喪失者についても、実は実態を知らないのではないのか?

*1:犯罪行為者を指して、「精神異常者は、犯罪者として要注意」と考えている訳ですから。(ここで言われている「精神異常者」は、実は「精神異常と診断されている人」ではなく、主張者が目撃している犯罪行為者自身。)

テスト的にインポートを試したが...

思う処あって、旧ブログのインポートをテストブログを作って非公開で試してみました。
「そんなにそっくりになるとは!」と思うほど旧ブログの内容をそっくり映したブログが作成できましたが、「新しくブログを作ったのに、まるで自分が何も変わっていないみたい!*1な感想を持ちました。
なので、旧ブログ自身が消える事は今のところはなさそう*2なので、旧ブログはそのまま残し、こちらでは新しい記事のみを載せる事にしました。

こちらからのリンクは貼りますので、旧ブログへはそれで移動してみてください。
なお、旧ブログからの移転記事も普通に作成できそうなので、一般的かつ永続的にフォローしていくような内容は、こちらに移すかもしれません。


という訳で、今後はこちらで記事公開をしてく予定です。

*1:実際には色々変わっているのに。

*2:ひとまず、はてなの決定が変わらない限り

お引越し

こちらでの初めての記事

長く Diary で書いて来ましたが、こちらに移ってきました。実は前からサービスは設定してあったのですが、ちゃんと書き始めたのは今日からです。

犯罪は精神異常者が起こす、のではない。(某創作が罪作りな部分)

多方面から創作が疑われるに至っている、本当にあったとされている誘拐未遂事件*1の件だが。
精神科医が懸念を表明していて、あれの一番いやな処は実際に類似の事件があるかどうかではなく*2、そういう事に気を付けようと訴えている表現に、精神異常者への偏見をかぶせに行っている処でしょう。
人の偏見や、ステレオタイプ心理に漬け込む構造になっている。
実は現実に医療観察法も似た構造を持っており、それを話題で持ち出す場合には、そもそもがこの話題の狙いに見事にはまってしまっているので、その点に注意して欲しい。
実際には犯罪行為を異常な状態とみなす心理が、それを形成していると思っているのですが、犯罪者は基本的に精神異常者ではありません
悪意ある普通の人が起こすのが大半の犯罪です*3
精神異常と判断される人は、人より判断が偏っているがゆえに、犯罪を最後まで完遂できないです。犯罪を完成させてしまえる人は、嫌な事ですが、そこまでの能力はある人、狡猾で人の盲点を知っており、人の盲点につけ入ることが出来るほどに、精神的には普通の人、なのです。
一見して異常に見えれば、周囲に警戒心を抱かせ、最終的には犯罪行為を完遂できないはず*4なのですが、相手の異常性に着目しているとき、その構造はきれいに忘れ去られてしまう。
犯罪は異常に見える人が起こすはずだという思い込みは、防犯の上でも怖い構造を生みやすい*5ので、心しておいてほしい部分です。

*1:twitter で告知された、子供を失った影響で、自分の子供と勘違いして他人の子供を誘拐し、警察に通報されたという事件。本当に起きたのなら、警察記録に載る筈なのだが。

*2:実際に人の心理の盲点を狙った犯罪はあるでしょう。その部分は事実。

*3:犯罪を犯罪として認識できていない心理がある部分はありますが、それは精神異常というより、行動則の異常のような感じ。あくまで、精神状態は正常です。いわゆる精神疾患ではありません。

*4:ある分野の精神異常の場合には、さらに捜査上の取り調べで、犯罪行為を実際にはしていないのに、あたかも自分がしたかのような心理に誘導されやすい人もいます。

*5:目につきやすい異常者を警戒し、悪意を隠し、密かに犯罪を犯す真犯人を見逃してしまう。冤罪を生みやすい心理。

刑事裁判(東京地裁)の傍聴席にて(1)

ちょっと続くかも知れないので、題にナンバリングが入っています。
久しぶりに東京地裁*1に裁判の傍聴に行ってきました。
何気に裁判予定帳が電子化されて、検索がし易くなってましたが、各部屋の前に出ているのは印刷した紙のままで、ちょっとだけ便利に?なった印象が、少し経った時間を感じさせてくれました。
確認したかった民事訴訟が意見書待ちの状況らしく、あまり時間がかからなかったので、実は刑事裁判を初めて傍聴したのですが、なかなか考えさせる状況でした*2
なお、精神的に余裕が無いと、そういう場にいると、色々心に刺さるものがある、と良く言われているので、入る際に覚悟は決めていたのですが、一般に言われる犯罪の実態とはちょっと違う裁判の内容が待っていて*3、今回の話は、ちょっと犯罪の話とは別傾向の話になるように思います。ただし、違う方向性でも、色々と考える内容はありました。


書くのに、色々考える事が多いので、ひとまず今日はここら辺で。また次回に。

*1:霞が関ですね。法務省赤レンガ棟の隣。

*2:時間の余裕があったので、実際には複数事案を傍聴しています。各事件をあまり特定させないように、焦点はぼかして記載する予定です。

*3:傍聴自身は一件ではないのですが、いずれも審理で、新件ではなく、ある程度進んだ裁判で、次回が判決という状況だったのですが、検察側も弁護側も、被疑者側も、それぞれ最終的な証言があったので、概要はかなり知ることが出来ました。なお、基本的には裁判記録で閲覧できる内容しか書く予定ではないのですが、それでも、色々考える事は出来ると思います。